タイムスタンプのインフラ整備

タイムスタンプのインフラ整備

2019年1月30日の日本経済新聞によると、総務省は電子データの改ざんや悪用を防ぐため、公的な信用を与える制度作りを始めるとのこと。具体的にはタイムスタンプ(デジタルタイムスタンプ)のインフラ整備を提案するようだが、今回はタイムスタンプについて解説していく。

タイムスタンプは消印のようなもの

あなたは自分宛に届いた郵便物の消印をじっくりと見たことがあるだろうか。消印は、切手やハガキの再利用を防ぐために押されるものだが、年月日、時間帯、回収した郵便局名が書かれている。「いつ、何時に、その郵便局にあった」と判るようになっているのだ。

タイムスタンプはデジタル版の消印といっていいだろう。デジタルの文書に作成日や署名などのデータを暗号化して付加し、「いつ作成されたものか」を後から確認することができるしくみだ。ただ、ちょっと待って欲しい。WordやExcelで作ったデータにだって日付を書くことができる。なぜ、タイムスタンプが必要なのか?

タイムスタンプは暗号化された情報

普段、私たちが会社や学校などでWordやExcelを使って作成した資料はタイムスタンプなど必要ない。いちいち、タイムスタンプを加えていたら面倒だし、なにより作業効率が落ちてしまう。

一方で、他社と契約を結び、その際に電子データで契約書を作成したとする。そして、残念ながら契約は守ってもらえずに自社が損害を受けたとしよう。裁判所へ契約書を見せて、契約の不履行を訴えるような場合、もし、相手側が巧妙に改ざんした契約書を持ってきたらどうなるだろう。

冒頭での日経の記事に「電子データの改ざんや悪用を防ぐため」とあったが、タイムスタンプは暗号化された情報であり、契約書を改ざんした場合はバレてしまう。具体的な暗号化技術の説明は省くが、タイムスタンプは、「この電子データは、いつから存在し、その内容は現時点まで変更されていない」ことを証明する技術なのだ。

国内の電子認証制度はまだこれから

現在のところ、民間企業がタイムスタンプのサービスを提供しているが、総務省は公的な制度が必要だと考えており、その制度作りを始めるのだという。

日本には公証制度というものがあり、公証役場へ行けば文書の内容を保証してくれる仕組みがある。例えば遺言書だ。生前に遺産の分割方などを記し、公証役場へ行けば公文書として書き残すことができ、余計な争いを避けられるかもしれない。しかしながら、電子データにはそのような制度がないのだ。

ちなみに、私たちが個人的に作成した文書は「私文書」、公証役場の公証人や公務員が作成した文書は「公文書」として区別され、公文書は社会的な信用があるため争いの際に証拠として効力を持つ。そのため、公文書の偽造は私文書の場合よりも重い罪となるのだ。

タイムスタンプはデジタル版の公証制度

総務省は、この公文書のような社会的信用を持つタイムスタンプの制度作りを考えている。つまり、タイムスタンプは、デジタル版の公証制度なのだ。

EUではすでにeIDASという包括的なルールが発行されており、その中にタイムスタンプのことも含まれている。日本でもこのようなルール作りを進めるのであれば、総務省ではなく、公証役場(法務省の管轄)の経験を活かして、法務省が進めたら早いのではないかと思ってしまうのだが…