海賊版誘導サイトの仕組み

海賊版誘導サイトの仕組みと問題点

2019年1月18日の日経新聞によると、漫画や雑誌などを違法に公開する海賊版サイトの運営者三名に大阪地裁が実刑判決を言い渡したとのこと。この記事を書く前年に社会問題ともなった漫画村をはじめとする海賊版サイトと、そこへアクセスを集めるための海賊版誘導サイト(リーチサイト)の仕組みを解説し、海賊版サイトの今後を占う。

まずは、仕組みの解説の前に海賊版サイトの何がダメなのか、整理しておこう。この当サイトでは中学生の読者でも読めるように、できるだけ専門用語を避け、一般常識を押し付けない方針で書いている。回りくどいと思われないように簡潔に整理していこう。

著作権は未来を担保する

漫画作家さんや出版社にとって、漫画は書店やコンビニで購入してもうらうか、有料の(著作権法を順守した)漫画閲覧サイトで読んでもらわなことには報酬が得られなくなってしまう。生計が立てられなくなるし、出版社も倒産するかもしれない。そうなれば、いずれ「マンガ家は儲からないよ」「あのヒットマンガの作者ってめっちゃ貧乏なんだってさ」と噂が広まるだろう。親からもマンガ家だけは止めておきなさいと言われるような環境で、才能ある若者が作家を志すだろうか。

著作権は、著作者へ正当な報酬を保証するものであり、また、次の世代の若者がその道へ安心して進めるようにもなる。

漫画村とは

漫画村とは2016年に開設された漫画閲覧サイト。書店で売られている漫画を無料で読むことができるため話題となり、多くの利用者を集めたが、これらの漫画は著作者に断りなく違法にコピーされたものなので「海賊版サイト」と呼ばれるようになったのだ。

海賊版サイトを運営するメリットは、広告収入を得られることにある。サイト内に広告を貼り、その広告から商品が売れれば運営者の利益になるのだ。たくさんの人が集まればそれだけ多くの広告収入が見込めるため、運営者は多くの漫画、新しい漫画を次々にアップロードしていた。

そして、作家さんからなる日本漫画家協会は海賊版サイトに対する憤りの声を上げることになった。これを受け、内閣の知的財産戦略本部は、海賊版サイトの接続遮断(ブロッキング)を法制化することを検討したのだ。

ただ、日本漫画家協会の理事長であるちばてつや氏は、「マンガ危機に向き合ってくれることに心強く感じる」と発言すると同時に、「ブロッキングは表現の自由や知る権利において、諸刃の剣になりかねないと危惧している」とも発言をし、表現者としてのスタンスを示していた。

漫画村をはじめとした海賊版サイトは、著作権を無視して多くのアクセスを集め、出版社の被害額は約3,000~4,000億円になると推計されていたのだ。

海賊版サイトへのブロッキング

中国の検閲

内閣がブロッキングの法制化を検討していることを受け、インターネット接続事業者は自主的な対策を施し、一時的に閲覧できないようになったのだが、海賊版サイトはアドレスを変え、違法な運営を続けていくことになる。

また、インターネット接続事業者は、インターネット上の違法行為は認めないながらも、政府の方針を「検閲」と受け取り、快くは思っていないようだった。現在の中国では検閲が行われており、中国の国内から中国共産党への批判が書かれているサイトはブロッキングされている。表現の自由を認められた日本では、インターネット接続事業者が政府主導のブロッキングに対して抵抗感を示すことは当然のことだろう。日本漫画家協会もインターネット接続事業者も表現の自由を縛るようなブロッキングは本意ではなかったのだ。

海賊版誘導サイト(リーチサイト)とは

ブロッキングがされた海賊版サイトは、アドレスを換え(引っ越しをし)別の海賊版サイトになった。アドレスを変えることに何ら違法性はないが、中身はもちろん違法サイトだ。しかし、アドレスを変えたことで検索には表示されなくなるため、このままでは、利益が減ってしまうと考えた運営者は次の手を打つことになる。

それが、リーチサイトだ。「ワンピース 無料」のようなキーワードでアクセスを集め、「この先で漫画をタダで読めますよ」とリンクを貼り、海賊版サイトへ誘導する。リーチサイト自体は以前からあったものだが、リーチサイト内に著作物が置いてあるわけではないため著作権侵害にあたらない。だからといって、許されるものではない。

この問題を複雑にする要素のひとつに、海賊版サイトやリーチサイトが海外のレンタルサーバーを使用している点にある。国内のレンタルサーバーであれば、レンタルサーバー会社へ「著作権を侵害しているサイトがあるから閉鎖しなさい。運営者の情報を提示しなさい。」と言えば話しは早い。

ところが、海外のレンタルサーバー会社の中には著作権や日本の法を尊重しない者もおり、儲かると思えば海賊版サイトの運営を続けさせるし、運営者の情報も提示しないだろう。もちろん、ちゃんとした海外のレンタルサーバー会社もあるが、違法サイトのほとんどは海外のサーバーで運営されている。

今回の日経新聞のニュースは、特に悪質な大手リーチサイト「はるか夢の址(あと)」の運営者三名に実刑判決が下ったというもので、彼らは海賊版サイトへ漫画の投稿も行っていたとのこと。

ブロッキングは正解ではない

海賊版サイトにしても、リーチサイトにしてもサイト内に広告を貼ることで収入を得ている。インターネットの広告代理店がそのような違法サイトに広告費を支払わない仕組みが必要なのだ。すでに、一部の広告が止められているようだが、海賊版サイトを無くしていくには完全に広告を止めなくてはならない。それができれば海賊版サイトを運営するメリットはない。海賊版サイトに広告を表示された企業もイメージダウンに繋がるだろう。広告を表示させるサイトの選定が海賊版サイト淘汰の鍵となるだろう。ブロッキングが正しい解決法ではないのだ。

海賊版サイトに広告費が入り、作家さんや出版社に報酬が支払われていない。この状況を変えなくては若い作家さんが育ちません。日本が世界に誇るマンガカルチャーが衰退してしまうことは非常に残念でならない。

私が学生だった頃、弟と折半して少年ジャンプを購読していた。漫画はムリをしなくても買えるものなのだ。作家さんと出版社に勤める社員さんへ、ありがとうの気持ちで対価を支払ってあげて欲しい。きっと、これからも世界に誇る日本のマンガカルチャーが、未来の私たちを楽しませてくれるだろう。