巨大IT企業 プラットフォーマー規制案

巨大IT企業 プラットフォーマー規制案

2019年4月25日の日経新聞に、政府は「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業の規制案を示したという記事があった。

まずは、どのような記事であったのか要約して紹介しておこう。

【要約】
政府は巨大IT企業に対して、ユーザー(消費者)の利便性向上と、彼ら巨大IT企業と連携する中小企業や個人事業主へ不当なルールを強要することを抑止する案をまとめた。
そのポイントは、

  • 強い立場を利用して不利な条件を強要する行為を規制
  • 取引実態の調査や取引条件の開示
  • 利用者の個人データを、他社へ移行する「データポータビリティ」の推奨

その他にもいろいろと書かれているが、主な内容は上記のようなことで、ガイドラインを制定して、巨大IT企業から弱者を守ろうといった趣旨になっている。

この記事の本質

冒頭で、政府が案をまとめたと書いたが、正確には経済産業省と公正取引委員会、それと総務省による検討委員会がまとめた「ITプラットフォーマーをめぐる取引環境の透明性・公正性確保に向けたルール整備案」という規制案だ。

この案を読むと、「デジタルプラットフォーム」「消費者や商品を提供する取引先」「大手による寡占や独占」などのキーワードが並び、あきらかにAmazon.co.jpを狙った規制であることが読み取れる。

先日、アマゾンは連携業者に不利益を強要するようなルールを発表した経緯がある。その後、そのルールは取り下げられることになったが、今回の規制案は、「このような横暴は許しませんよ」といったメッセージなのだ。

プラットフォーム・プラットフォーマーとは

英語のプラットフォーム(Platform)には、「一段高い場所」といった意味がある。駅のフォームや、演説時の演壇などがそれだ。

インターネットやコンピューターの世界でも、同様のニュアンスがあり、アマゾンのような巨大IT企業が土台を提供し、連携する中小企業や個人事業主がその上にお店を構える。この土台を「プラットフォーム」、土台を提供する企業を「プラットフォーマー」と呼んでいる。具体例を挙げた方が分かり易いだろう。

プラットフォーマーとしてのアマゾン

この記事の読者にもアマゾンを利用しているユーザーが多いと思うので知っているかもしれないが、アマゾンで売られている全商品がアマゾンの調達した商品ではない。中小企業や個人事業主がアマゾンに自身の商品を置かせてもらっているケースも多いのだ。

彼らはアマゾンや楽天などへ手数料(ショバ代)を支払い、商品の販売ルートを広げている。自社サイトを運営して、そこで販売しているケースもあるがメンテナンス作業や、決済の手間などを考えると、手数料を払ってアマゾンなどを利用した方が楽だ。

アマゾンはインターネット上の仮想店舗を提供するプラットフォーマーとして成長を続けてきたのだが、大きくなり過ぎた影響力によって、利用者との軋轢が懸念されるようになってきたのだ。今回の規制案は、まさにこの強すぎるアマゾンへの警戒から生まれた。

では、あなたに一つ質問をしよう。強すぎるプラットフォーマーは何が問題なのか?消費者が少しでも安く買えるようになるのであれば問題はなさそうではあるが。

一方的なルールの強要から弱者の利益を守るには

あなたが、アマゾンや楽天に出店している個人事業主だとしよう。手数料を払い、自分で作った商品を置かせてもらっている立場だ。出店前の契約時には、長々と出店のルールを読まされて、納得した場合は「同意する」をクリックすることになる。

ただ、そのルールが一方的に変更されたらどう思だろうか?「来月からお客様へポイント還元のシステムを導入します。ポイントの還元分はあなたが負担してください」と強要されたら、「ちょっと待ってよ!」と思うだろう。ポイント制度のせいであなたの利益は減ってしまう可能性がある。

しかし、あなたに対抗するだけの力はあるか?残念ながら、巨大企業の言いなりになるしか選択肢はないだろう。アマゾンは実際にそれを実行しようとしてしまったのだ。今回の規制案は、このような一方的なルールから弱者を守ろうという趣旨で生まれた。

世界共通の制度が望ましい

今回の案にはアマゾンという具体的な企業名は挙げられていないが、これまでの経緯と案の内容を見れば、それがアマゾンを対象にしていることは一目瞭然だろう。

私も一企業を対象とする案に抵抗感はある。が、その影響力を考えるとこのような規制は必要になってくるはずだ。米国ではこのような規制に消極的ではあるが、欧州ではすでに厳しい規制が整っている。

欧州では守られる者が、日本や米国では泣き寝入りするしかないようなルールはフェアではない。日本のユーザーが安心して出品できる(仮想店舗に出店できる)環境構築が求められているのだ。

おまけ:データポータビリティとは

冒頭の要約に「データポータビリティ」という用語が挙がっているので、最後に簡単に説明しておこう。

ポータビリティ(Portability)は「可搬性」という英語だ。噛み砕いて言えば「移動できること・持ち運べるもの」といったことだ。

数年前に携帯電話の契約会社を変更しても、電話番号が変わらないサービスが始まったことを覚えているだろうか。これは「ナンバーポータビリティ」といって、強いて日本語にすれば「電話番号を他社へ移動することができる」サービスということだ。

今回は「データを他社へ移動することができる」サービスになる。つまり、あなたがアマゾンを利用している場合、あなたの名前、住所、電話番号やメールアドレス、これまでの購入履歴などのデータを、まだ利用したことのない楽天など他社へ簡単に移動できるようになるということだ。

過去の購入履歴から、新しいサービスを受けるようになっても的確なオススメ商品が紹介されることだろう。もちろん、このような機能は不要、むしろ引き継ぎたくないという人もいるだろう。そういう場合はキャンセルできる。

また、新規の会員登録には入力事項が多く煩雑だが、これが簡素化される可能性もある。うまく付き合えば便利な機能といえるだろう。